固定資産税の基礎知識、土地の評価額&負担水準から課税標準の計算方法

固定資産税を計算する上で必要な「評価額」や「課税標準」、固定資産税評価額で影響を受ける他の税金の一覧を前回におさらいした。

今回は、土地の評価法、土地の評価額を求める計算式を説明していく。


土地の評価法とは

固定資産税での土地の評価方法は、まず「地目」を定める。固定資産評価基準では、地目には宅地、田、畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、雑種地の計9種類があり、それぞれの地目ごとに評価の仕方が異なっている。
不動産登記上の地目と評価基準の区分は必ずしも一致しない。登記上の地目と利用実態が異なっている場合は、市町村が航空写真で確認するなどし、利用実態に即して区分する。

宅地の評価は、原則として、1筆を1画地として認定して評価する。ただし、その形状や利用状況からみて、1筆の土地を分割して評価する場合(分割評価)や、隣接する2筆以上の宅地を合わせて一体的に評価する場合(同一画地評価)がある。

例えば、2筆以上にまたがる土地を一つの住宅として利用していれば、2筆を一つの画地として評価する。
逆に、1筆の土地を住宅と店舗に分けて利用していれば、住宅部分と店舗部分の土地をそれぞれ分けたうえで別々に評価する。画地が正しく認識されていないと、高く評価されることがある。

土地の評価額を求める公式

土地の評価額 = 固定資産税路線価 × 補正率 × 土地の面積
※補正率:不整形地補正率、間口狭小補正率など

固定資産税評価額は基本的に、その土地が面する道路の「固定資産税路線価」に土地の面積を掛けて求める。

固定資産税路線価については、資産評価システム研究センターが運営するウェブサイト「全国地価マップ」を確認してみよう。全国の固定資産税路線価と、路線価算定の基となる「標準宅地」(奥行き、間口、形状などが標準的な宅地)の場所が公開されている。

 全国地価マップで固定資産税路線価をチェック
固定資産税路線価を確認できる – 全国地価マップ

固定資産税路線価はその道路が面する土地の1平方メートル当たりの価格を表している。地価公示価格の7割の水準となるよう各道路に設定され、3年ごとの評価替えの際に見直される。

土地の評価額は、土地の形、道路へのアクセスの良さで補正される

ただ、土地の形は整っているとは限らない。道路に面する間口が狭かったり、形がいびつな土地は利用条
件が悪い分、価値も低いと考えられる。そのため、宅地については固定資産評価基準に定めた基準にしたがって、評価額が減少するよう補正する。

一方、複数の道路に面する宅地は、逆に利用価値が上がると考えられるため、その分だけ評価額が増加するように補正する(※計算式上の補正率)。
広く不特定多数の人が利用する私道やセットバック部分は固定資産税が非課税となる。

負担調整措置ってなんだ?

宅地の固定資産税の課税標準を求めるには、もう一つ複雑な計算を経なければならない。それが「負担調整措置」だ。
土地の課税標準は本来、固定資産税評価額だが、かつては地価公示価格に対して大幅に低い土地が珍しくなく、また個々の土地や地域ごとにばらつきもあった。バブル期には地価上昇ペースに固定資産税評価額が追いつかず、国は3年度の評価替えで地価公示価格の7割の水準まで固定資産税評価額を引き上げることにした。

しかし、固定資産税評価額を急激に引き上げては、固定資産税額も大幅に増えてしまうことになる。そのため、評価額の上昇割合に応じてなだらかに課税標準を引き上げる負担調整措置が導入された。また、5年度からの負担調整措置では、土地ごとの課税標準のばらつきを均衡化する仕組みが採用された。

バブル崩壊後に地価下落が続いたにもかかわらず、宅地の課税標準額や固定資産税額が上がる現象が生じたのは、この負担調整措置による影響が大きい。

負担調整措置の計算方法

負担調整措置を計算するには、まず「負担水準」を把握する必要がある。
負担水準とは、ある土地の前年度の課税標準額が、今年度の評価額に対してどの程度の水準かを指す。住宅用地では「前年度の課税標準額 ÷(今年度の評価額 × 住宅用地の特例率)」で計算する。

■負担水準計算式
前年度の課税標準額 ÷(今年度の評価額 × 住宅用地の特例率)

この負担水準が20~100%なら、今年度の課税標準額は「前年度の課税標準額 + (今年度の評価額 × 住宅用地の特例率 ) × 5% 」とする。

つまり、前年度の課税標準額が本来の課税標準額(今年度の評価額 × 住宅用地の特例率)に一致するまで、本来の課税標準額の5%分を上乗せしていく仕組み。

■負担調整措置まとめ
①「負担水準」を求める(上記、負担水準計算式を参考)
②「負担水準」が20~100%・・・「前年度の課税標準額 + (今年度の評価額 ✕ 住宅用地の特例率)✕ 5%」を上乗せする

以下、具体例を取り上げてみよう。

・前提条件
東京都の固定資産税・都市計画税の課税明細書(東京23区の場合)
固定本則課税標準額:750万円
固定前年度課税標準額等:675万円

先ほどの計算式の通り、負担水準は「 675万円(前年度課税標準額=課税標準) ÷ 750万円(固定本則課税標準額=本来の課税標準額)」で負担水準が 90% と求まる。

つまり、本来の750万円を課税標準とするのではなく、「750万円 × 5% = 37万5000円」を前年度の「675万円」に上乗せ。
結果として、今年度の課税標準は「712万5000円」と計算される。

家屋の評価法とは

家屋の固定資産税評価額は、購入時の価格や建築工事費ではなく、「再建築価格方式」によって求めている。

再建築価格とは、評価時点で同じ建物をその場所に新築するのに必要な建築費を指す。固定資産評価基準では、家屋の構造や屋根、外壁、内装などに使われる資材・設備ごとに「評点数」を細かく定めている。この評点数を資材や設備の量、数に掛け合わせて合算し、家屋の「再建築費評点数」を算出する。

評点数は、1点=1円×物価水準による補正(倍)率(木造家屋1.05、非木造家屋1.10)で計算し、家屋の固定資産税評価額としている。

家屋完成に役所の人間が来るのは、「固定資産税評価額」算出のため

家屋の完成時に市町村の担当者が現場に来たり、図面を借りたりするのは、家屋の構造や資材・設備の量・数を確かめて、固定資産税評価額を出すため。

担当者には地方税法で「質問検査権」が与えられ、調査を拒否すると罰則が科されることがある。資材・設備の量・数ごとに細かく評点数を積み上げる方法のため、大型の複合ビルなどでは評価額を計算するのに2年ほどかかったりすることもある。

家屋の評価額は3年ごとの評価替え

土地と同じく、既存の家屋の評価額も3年ごとの評価替えで見直される。その際、ゼロから評価し直すのではなく、前年度の再建築費評点数を基準に、建築物価の変動分や建築後の経過年数に応じた減価分を補正する。

建築物価の変動分は「再建築費評点補正率」で計算し、今年度の評価替えでは木造家屋の補正(倍)率として「1・8」、非木造家屋は「1・8」が適用される。家屋の評価替えで評価額が下がらないこともあるのは、建築物価の変動分の補正が影響している。

また、経過年数に応じた減価分は経年減点補正率で補正し、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄骨造など家屋の構造によって異なっている。また、家屋の固定資産税評価額は再建築価格の3%を下回らないこととされており、古い家屋では評価額が下がらないことがある。ただ、家屋では評価替えに伴って前年度の評価額を超えた場合には、前年度の評価額に据え置かれる規定になっている。

複雑で手間のかかる評価法のため、設備であるエレベーターの基数を数え間違えたりするなど、評価の誤りは少なくない。評価額に疑問があれば家屋の「評価調書」を見せてもらい、土地とともに説明を求めたほうがいい。

◯家屋の固定資産税評価額の計算式
家屋の評価額 = 再建築費評点数 ✕ 減点補正率 ✕ 評点1点当たりの価格
※減点補正率は、経年減点補正率など


役所の人間がすべて正しいとは限らない。家屋の「評価調書」を見せてもらい、誤った計算がないかチェックするべき ※画像はイメージ

評価に不服がある場合はどうしたらいい?

固定資産税に対する不服は、評価額とそれ以外で手続きが異なっている。
評価額に対する不服は、各市町村の固定資産評価審査委員会に対し、「審査の申し出」という手続きを取る。審査の申し出は地目変更や家屋の増改築といった事情がなければ、3年に1度の評価替えの年にしか認められておらず、納税通知書が交付された日の翌日から3カ月以内が申し出の期限。

審査委は申し出を受けて審査し、その結果を決定する。決定に不服があれば、決定を知った日から6カ月以内、または決定の日から1年以内に審査決定の取り消し訴訟を提起する。

評価額以外の不服は市町村に「審査請求」を

一方、評価額以外の法令解釈や事実認識などは、市町村長に対して「審査請求」を行う。
請求の期限は、その年の納税通知書が交付された日の翌日から3カ月以内。市町村長は請求を受けて、請求が妥当かどうかを裁決する。裁決に不服があれば、裁決を知った日から6カ月以内、または裁決の日から1年以内に裁決の取り消し訴訟を提起する。
土地の地目や画地の認定、家屋の再建築費評点数などは審査の申し出の対象で、特例の適用ミス、非課税の扱いなどを争う場合は審査請求になる。

過去にミスは多発しているので要注意。役所の明らかなミスなら随時修正

重大で明らかな市町村側のミスであれば、「審査請求」などの手続きを経なくとも、市町村は随時修正に応じている。市町村側のミスが判明した場合、徴収しすぎた税金については通常、地方税法の消滅時効である過去5年分が還付される。数十年間にわたり徴収ミスが各地の自治体で相次ぐ事例があり、役所の処理を100%鵜呑みにするべきではない。

一方、不服申し立て以前に、固定資産税は期限までに必ず納付する。期限をすぎれば、他の税と同様に督促状が送られる。延滞金に加え、最悪の場合は預金や給与、不動産などを差し押さえられ、公売にもかけられてしまう。
督促状が届いたら、市町村の担当課に税を支払う意思を伝えたうえで、速やかに納めたい。災害や納税者自身のけが、病気などの場合は1年間、納税を猶予する制度もあるので覚えておきたい。

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