固定資産税の基礎知識、固定資産とは?課税台帳の内容&評価額変更で影響を受ける税金一覧

土地や一軒家、マンションなどを所有している方であれば、毎年発生する固定資産税。何となく分かっているつもりでも、難解な固定資産税を深く理解している方は意外と少ないもの。
基本的な知識を、網羅的に分かりやすく紹介してしたい。

固定資産ってナンダ?

まず、固定資産税を理解する前提として必要なのは、固定資産に関する定義を理解すること。
固定資産税の課税対象となる「固定資産」は、地方税法で「1.土地」、「2.家屋」、「3.事業用の償却資産」の三つに分けて定義されている。

「土地」とは宅地や田、畑、山林など、土地登記簿に記されるべき土地のこと。「家屋」とは、住家や店舗工場(発電所、変電所含む)、倉庫など、こちらも建物登記簿に登記されるべき建物が該当する。
一方、基礎のない簡易な物置や、支柱と屋根だけで壁のない駐車場などは該当しない。

また、「事業用の償却資産」とは、機械や設備、装置のほか、ボートやヘリコプターなど、法人税・所得税で減価償却の対象となっている資産を指す(自動車税、軽自動車税の課税対象などは除く)。

建築設備と償却資産を区別する

ややこしいのは、家屋に含めて評価される建築設備と償却資産の区別だ。「家屋と構造上一体となっている設備」は家屋に含まれ、エレベーターや空調設備などが該当する。
一方、壁掛け型のエアコンや飲食店の厨房設備などは償却資産となる。

一部、非課税となる固定資産がある

固定資産を所有していても非課税となる場合がある。国や地方公共団体の所有分のほか、公共用の道路や運河、用水路などがその例。宗教法人の寺社や学校法人の学校、社会福祉法人の老人福祉施設なども非課税だが、営利事業など目的外に固定資産を使用すると課税対象となる。

固定資産税の算出の基となる課税標準額が一定額に満たない場合も、徴収事務が煩雑になるため課税しない。これを「免税点」と呼び、土地は8万円、家屋は3万円、償却資産は150万円となっている。

 固定資産税を正確に理解したい
基本知識を頭に入れて、固定資産税を正確に理解したい

固定資産税の納税義務者はだれ?

固定資産税は毎年1月1日時点の固定資産の所有者を納税義務者として、市町村(東京23区は東京都)が課税する。1月2日以降に売買などで所有者が変わったとしても、1月1日時点の所有者に1年分の納税義務が生じる。

不動産の売買の当事者間で固定資産税を日割り精算するのは、あくまで単なる商慣習に過ぎない。売買や相続、贈与などで土地・家屋の所有者が移「った場合は、市町村は登記簿を管理する法務局から送られる通知によって新たな所有者を把握する。

共有名義は連帯納税、所有者がなくなったら相続人が義務を引き継ぐ

固定資産が共有名義の場合は、名義人が連帯して納税する。また、所有者が死亡した場合は、その相続人が納税義務者となる。相続人が複数いれば、遺産分割の完了まで相続人全員の共有物となり、連帯して納税義務が生じる。
ただし、分譲マンシヨンなどの区分所有の土地・家屋の場合には、連帯して納税する義務は適用されない例外があり、区分所有者が持ち分の割合に応じてそれぞれ納税する。

課税台帳ってどんなもの?

課税台帳とは、固定資産税の課税対象となる土地・家屋について、固定資産の所有者(納税義務者)の住所、氏名や固定資産の価格(評価額)、固定資産の属性(土地の地目や面積、家屋番号や家屋の床面積など)が記載されている帳簿のこと。
課税対象となる固定資産は、市町村が「固定資産課税台帳」に登録している。

課税台帳への登録を前提として課税することを「台帳課税主義」と呼んでいる。逆に言えば、固定資産課税帳に登録されていない固定資産は課税されない。

固定資産税は市町村が税額を決める

固定資産税は、市町村が税額を決める「賦課課税」方式(税務官庁が税額を確定、納税者に納付の通知を行う方式)を取っている。通知される税額は、市町村が土地、家屋を評価して評価額を決め、その評価額に税率を掛けるなどして税額を算出している。
そのため、土地、家屋では地目などの情報や評価額、税額に誤りがあっても、納税義務者自身が気づかない限り長期間、見過ごされるリスクもはらんでいる。
一方、償却資産は土地・建物と異なり登記制度がないため、償却資産の所有者に毎一年、1月末までに申告義務が課せられ、申告に基づき課税帳に登録される。

固定資産課税帳の記載内容を確認する方法は?

固定資産課税帳の情報は毎年4月以降、市町村から納税通知書とともに送られてくる課税明細書でも確認できるほか、市町村の役所に行けば自分が所有する固定資産の課税台帳をいつでも見られる。
また、同じ市町村内であれば、「縦覧」という制度で他の所有者の土地・家屋の評価額を見られ、自分の評価額と比較できる。縦覧期間は毎年4月以降、1カ月程度が多い。

家屋の増改築や取り壊しなどによって現況が変化することもあるが、家屋の中には未登記のものもあるなど、これが正しく登記されるとは限らない。こうした変化を把握するため、市町村は毎年1月1日時点で航空写真を撮影するなどし、現況が変化していないかチェックしている。

評価額、課税標準とは?

地方税法では土地、家屋などの固定資産について、「適正な時価」に対して課税すると定めている。この「適正な時価」を固定資産税評価額とし、市町村が評価額を決めている。

納税者に毎年通知される課税明細書では、単に「価格」と記載されていることもある。この固定資産の評価方法は、総務省が全国一律の「固定資産評価基準」として、土地、家屋、償却資産ごとに細かく定めている。

住宅用地の特例措置で、評価額と課税標準が一致しないことがある

地方税法ではこの評価額を原則として「課税標準」とし、課税標準に固定資産税率を掛けて税額を算出する。しかし、特に土地には住宅用地の固定資産税負担を軽減する「住宅用地の特例措置」があり、特例を加味した評価額を課税標準とするため、評価額と課税標準は一致しないことがある。
住宅用地の特例措置では、200平方Mまでの小規模住宅用地の課税標準は評価額の6分の1に、200平方M超の一般住宅用地は3分の1に軽減されている。固定資産税額もその分、少なくなる。

市町村による固定資産税の課税誤りで多いのが、住宅用地の特例措置を適用し忘れているケースだ。税額に与える影響が大きいため、しっかりとチェックしたい。また、住宅の完成を年内に急いだり、取り壊しのタイミングを年明けにずらしたりするのも、この住宅用地の特例措置のためだ。

1月1日に住宅が建っていれば特例が適用されるが、更地なら適用を受けられず課税標準が6倍になる。ただ、すでに新築工事に着手しているといった要件を満たせば、特例の適用を引き続き受けられる。

固定資産税評価額は“他の税”にも影響する

固定資産税評価額は固定資産税の課税にだけ使うのではなく、他の税にも大きく影響している。都市計画法の市街化区域内にある土地・家屋には、「固定資産税評価額×0.3%(最高限度)」の都市計画税(市町村税)がかかる。都市計画税にも住宅用地の特例措置があり、200平方メートルまでの小規模住宅用地は評価額の3分の1に、200平方メートル超の一般住宅用地は3分の2に軽減される。

また、土地の売買に伴う所有権の移転登記には、「固定資産税評価額×1.5%」(2年3月末までの軽減措置)、家屋の売買に伴い所有権を移転登記する場合は「固定資産税評価額×2%」(個人が自ら居住する家屋なら0・1~0.3%の軽減税率)の登録免許税がかかる。
さらに、土地・家屋(住宅)の購入・贈与の際には、「固定資産税評価額×3%」(3年3月末まで)の不動産取得税(都道府県税)が発生する(宅地として評価している土地は評価額を2分の1にして計算)。

加えて、家屋を相続したり贈与し「たりする際、相続税や贈与税(いずれも国税)は家屋の固定資産税評価額をもとに課税される。いったん評価額を誤れば、納税者が指摘して修正されない限り、世代を超えて引き継がれることになる。

固定資産税評価額で影響を受ける他の税金おさらい

■都市計画税
⇒固定資産税評価額(土地、家屋)×0.3%(最高限度)

■登錄免許税(土地の所有権移転登記の場合)
⇒固定資産税評価額(土地)×1.5%

■不動產取得稅
⇒固定資產稅評価額(土地、住宅)×3%

■相続税、贈与税
⇒家屋の相続税評価額は固定資産税評価額

固定資産税の税率はどれぐらい?

固定資産税率は市町村ごとに異なるが、地方税法で市町村が通常用いるべき税率(標準税率)として「1・4%」と定められている。

総務省によれば2017年度、全国1719市町村(東京3区を1自治体として含む)のうち、標準税率を採用しているのは1566市町村と9割以上。人口8万人以上の市ではすべて標準税率の1・4%を採用している。残る市町村はいずれも標準税率より高い税率で、青森市や秋田市などでは1・6%となっている。

固定資産税は市町村にとってのキャッシュカウ(稼ぎ頭)であり、基幹税といえる。総務省によれば、固定資産税収は9年度、約8.9兆円と、市町村税収の4割強を占める。
このうち、土地は約3・4兆円、家屋は約3.8兆円、償却資産は約1.6兆円と、家屋の固定資産税収がもっとも多い。しかし、固定資産税は東京など大都市部に税収が偏在しており、都道府県別の人口1人当たりの税額では、最も高い東京都が2万8625円なのに対し、最も低い長崎県では4万6936円と倍以上の開きがあるのも興味深い。

適正価格の見直しを行う「評価替え」とは

固定資産税の建前は、毎年1月1日時点における固定資産の「適正な時価」を課税標準として課税する。しかし、膨大な数の土地、家屋の「適正な時価」を毎年評価することは、あまりに実務の負担が大きい。そこで、3年ごとに評価額を見直し、3年間は評価額を据え置く制度が採用されている。

この3年に1度、評価額を見直すことを「評価替え」と呼んでいる。

前年1月時点の地価公示価格が基となる

土地の固定資産税評価額の評価替えでは、国土交通省が発表する前年1月1日時点の地価公示価格を基に評価し直す。例えば2018年の評価替えでは、17年1月時点の地価公示価格が基になる。
7年1月時点の地価公示価格は、多くの土地で3年前に比べて上昇しており、今年度の評価替えで前年度に比べ評価額が上昇する土地も少なくないとみられる。

一方、家屋は評価替えの際、建築時点からの経年劣化分や物価変動分などを考慮して評価し直すが、新たな評価額が前年度を上回る場合は前年度の評価額に据え置くことになっている。

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