取り上げている業界は、以下の通り全部で6つ。
・①EV(電気自動車)
・②電池(EVシフト)
・③AI(人工知能)
・④仮想通貨
・⑤RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
・⑥インフラ輸出
今回は、④〜⑥について紹介していく。
④仮想通貨
2017年初頭から急激に熱気を帯びる仮想通貨市場。同年後半には、代表的な仮想通貨であるビットコインの価格が1年間で倍超に急騰する場面もあった。
その後は各国の規制強化に関する報道や、取引所大手・コインチエックの仮想通貨「NEM(ネム)」流出事件などを受け、価格が大幅に反落。足元では昨年つけた最高値の半分程度となった。
とはいえ、サービス領域の拡大とともにまだまだ利用者層が広がる可能性は高い。仮想通貨の基盤であるブロックチェーン技術を、将来的にあらゆるネットサービスに応用することも志向されている。商機をつかもうとする企業の参入は加速する一方だ。
新規参入企業が続々、値上がりの材料になるか
仮想通貨取引所の運営に乗り出す企業が続々出ている。上場企業ではSBIホールディングス、マネーパートナーズグループ、フィスコなどだ。このうちフィスコは取引所を開設済みだが、SBIとマネーパートナーズは金融庁から仮想通貨交換業の登録を受けたものの準備中。なお、SBIはマイニングと呼ばれる仮想通貨の採掘ビジネスも行う。
マイニング、取引所と並んで注目したいテーマがICO(イニシャル・コイン・オファリング=仮想通貨を用いた資金調達)だ。決済代行サービスなどを手掛けるメタップスは、2017年2月に韓国子会社でICOを実施。上場企業傘下で世界初の事例となった。
Q&Aサイトを運営するオウケイウェイヴも自社でのICO実施に向け準備中。株式の目論見書に当たるホワイトペーパーの翻訳サービスなど、ICO支援という周辺ビジネスも開拓する。
取引所ビジネスを運営している複数の業者が金融庁から行政処分を受けるなど、仮想通貨関連ビジネスはまだ未成熟な段階にある。投資対象を検討する際は、その点も踏まえておく必要がある。
⑤RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
オフィスの定型業務を自動化するツールとして注目されているのが、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA・左図)。人手不足と、長時間労働を是正する「働き方改革」の要請により、導入企業が急増。比較的安価で、短期間で導入できることもあり気に普及が進んでいる。
大手SIによる取り組みはやや鈍いが、市場が急拡大しているだけに、見逃せないテーマだ。「RPAソフトは「ブループリズム」や「UiPath」などの海外勢に加え、日本発の「ウィンアクター」も強く、こうしたツールを担いだIT企業も増えている。
国内ではUiPath(ユーアイパス)が普及するか
「Uiパス」を担ぐ企業が国内で増加中。システムソフト、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、ISID、JFEシステムズなどのシステム会社が軒を連ねる。CTCは大分銀行への導入事例を発表したばかり。また、ISIDは親会社の電通の働き方改革案件でRPAの豊富な導入実績を築いている。
UiPath(ユーアイパス)は、操作しやすいインターフェースを備え、API連携による拡張が可能な、適用システム範囲が広いRPA(Robotic Process Automation)プラットフォームです。
全世界で660社以上、日本国内でも、メガバンクをはじめとする大手の金融機関、製造メーカー、広告代理店等、100社以上で採用されています。
UiPath導入により定型作業を自動化 – JFEシステムズ
ソフトバンクが資本参加、「ビズロボ」にも注目
今後、RPAの代表銘柄となりそうなのが3月7日に上場した『RPAテクノロジーズ』。RPAツールなどをパッケージ化したサービス「ビズロボ」で存在感を発揮し、大株主にはソフトバンクも名を連ねる。
人気化すれば提携するエン・ジャパン、インフォテリア、sHIFTなども買われる局面が出てきそうだ。
同様に複数のRPAツールを選べるトータルパッケージの提供を開始したTISなども存在感。実績で目立つところでは、住信SBIネット銀行からRPAシステムを受注したアイティフォー。あおぞら銀行のRPA案件を担当した兼松エレクトロニクスも今後注目されてきそうだ。
RPAセンター開設が注目されたのはジェクシード。セゾン情報システムズも専門組織を開設しており、自社ソフトとの組み合わせを狙っている。
⑥インフラ輸出
インフラ輸出は民主党政権時代に日本政府の成長戦略に掲げられ、現政権にも承継されている、まさに国策である。人口減少で国内市場は頭打ちだが、新興国を中心に需要は右肩上がり。「日本の高い技術やノウハウでその成長を取り込む」これが国の描くシナリオだ。
ターゲットは発電所、鉄道、空港、港湾、プラントなど多岐にわたる。こうした分野は一企業で取り組むには限界があるため、外交、経済協力、公的資金など政府の支援が前提となることが多い。官民連携、日の丸連合といったワードがよく使われてる。
「インフラ輸出」銘柄は、機器を売るだけではなく、設計から建設、運営、管理までシステムで提案する案件が増加。かかわる企業も重電や重工のメーカー、電力や鉄道の運営会社、建設、エンジニアリング、コンサルティング、金融機関、総合商社など幅広い。
たとえば鉄道では、日立製作所が英国の都市近郊の高速鉄道車両(下写真)や大型の車両更新条件を手掛けるほか、イタリア企業を買収するなど海外展開を強化する。また川崎重工業は米国を中心に車両の納入で実績を積んでいる。
資金面、長期計画、東芝の二の舞い?リスクは念頭に
世界的にはインドや米国など多くの大型の鉄道整備計画があるが、こうした大型案件が進展するたびに各社の名前が挙がる可能性が高い。
ただし、名前が挙がるのはどこも時価総額兆円単位の大企業、ビジネスとしてうまみがあるかは別の話。むしろリスクは念頭に置いておいたほうが無難。
というのも、中国、韓国、欧米企業も自国政府の支援を受けて参戦するため、条件が悪くなりやすい。資金の面倒を見て、建設から運営までの長期間のリスクを負うのも受注側ということもある。正式決定までに時間がかかるうえ、相手国政府の都合で見送りになる案件も多い。
極めてリスクが高い事業として最たるものは、原子力発電所。東芝は米国での原発建設で巨額損失を出したことを発端に、今に至る。現在、日立は英国で計画を進めているだけでなく、三菱重工業も海外での受注をもくろんでいる。
原発輸出には日本政府も積極姿勢であるため、インフラ輸出銘柄は景気のいいニュースが出てくる可能性が高いが、大きなリスクを孕んでいること。また、インフラ輸出案件は、すでに時価総額1兆を超える超大企業が取り組む案件であり、海外での受注が株価を大きく押し上げる要因になるかどうかについては、冷静に考えなければならない。